パラダイムシフト

パラダイムシフト

 真面目な話、実際に未来を予測しようとする際に、最も大事なのは「今の時代と未来では、どんな価値観の違いがあるか」ということをはっきりと見極めることです。
 こういった「社会を構成している基本的価値観」を「パラダイム」と呼びます(「パラダイム」という概念の提唱者T・S・クーン自身はその著書『科学革命の構造』で「パラダイムシフトが存在するのは自然科学の分野のみに限られる」と言っています。しかし現在では社会学の用語として使われることが多いようです)。
 たとえば、私たちは「自然現象にはすべて合理的理由がある」と知っています。でも、昔の人にとっては雷鳴とは「雷様の怒り」だったのです。
 また織田信長の快進撃の原因は、鉄砲の使用や楽市楽座といった経済政策によるものだ、と知っています。でも、昔の人は「あれだけ強いのは天の義を得ているからだ」と考えていたでしょう。
 これは彼らが無知だからではなく、パラダイムの違いによるものです。何かに理由を求めるときに「神がそう決めたからだ」とするパラダイムと「自然法則でそう決まっているからだ」とするパラダイムの違いが、両者の違いなのです。

 そのパラダイムに変化があれば、当然、社会システムや政治、経済、家庭、生活様式といったあらゆる部分に大きな変化が起こります。そういう大きな、社会を変えるほどのパラダイムの変化のことを「パラダイムシフト」と呼びます。
 それによって起こる社会変化たるや大変なもので、農業革命、産業革命は人類に起こった最大のパラダイムシフトだった、といわれています。
 で、ここが重要なんですが、堺屋もトフラーも口をそろえて、「今までの二回のパラダイムシフトに匹敵する、大きな変化が起きている」と述べています。
 いえ、この二人だけではありません。小は(と言ったら失礼かな?)栗本慎一郎から、大はP・F・ドラッカーといった大物学者まで、全員が「現在はパラダイムシフトの時期だ」と言っているのです。

 では、現状や今後の社会を考えるためには、今起こりつつあるパラダイムシフトを分析することしかあり得ません。現在、私たちは産業革命以来の初めての巨大なパラダイムシフトに立ち会う、という大変貴重な体験をしているのです。
 なんて幸運なことだと、思いませんか。
 これ以上おもしろいことなんて、滅多にありませんよ!
 それでは、現在起こっているパラダイムシフトを観察してみましょう。