本を読んで、自分の尺度で

大学院時代、私の恩師がこういっていました。「本を読んで、自分の尺度でしか測らないのであれば、君はもう本を読まなくても良い。あとはずっと、何を読んでも君の物差しをあてはめる作業になるだけだから。本を読むというのは、そこに自分とは違う何かを見つけ、それによって自分が揺さぶられることなんだよ」と。それは、近代日本の小説を現代の風営法の観点からぶった切るという、恐ろしくチャレンジングな発表の後、発表者に対して投げた厳しくも優しい一言(私だったらコメントすらしなかったような気がします)でしたが、その通りだと思います。

本を――とりわけ物語を読むということは、物語世界を、あるいはその中の登場人物たちを自らにとって「他者」と見なし、そこで交流をはかること。私なりに言い換えると、そんな風になるでしょうか。だから、自分の考えが当てはまらないからといって、容易に怒ってはいけない。見捨ててもいけない。そこで描かれているものを慎重にとりだして、じっくりと味わってみる。もちろん「やっぱり口に合わない」と思うかもしれないし、「意外といけるな」と思えるかもしれません。けれど、そこに新しい世界が見えてくる可能性がある、と私は思います。だからこそ、物語を読むのは楽しい。”

よい子わるい子ふつうの子 ハッピーエンドとは何か ――ユーザーと作品世